「04.

    遊園地」

-------------------------------------


「だぁぁ〜〜〜っ!!今度は、ここかっ!?」
ルール変更。
好きモノの親父どもが、考えそうな趣向。
BUS GAMER達は、他人の命の中で、GAMEをすることになる。
「…らしいな……」





家族――
母親、父親、子供……歓声が、響く、幸福な時間が、そこにはあった。
「この中のいったい、誰が、『敵』だっていうんだ……」
美柴は、うんざりしていた。
自分が、もっとも、触れたくないモノ……
(…家族なんて……そんなもん……)
「どうしたんスか?顔、蒼いっスよ…?」
斉藤が、美柴を覗き込む。
少し、汗の浮かんだ、美柴の額……
「…いや……なんでもない……行くぞ………」
「よっしゃっ!」
「…美柴……」
「ん…?」
「……あのベンチの二人………」
見た目には、極普通のカップル。
いや……
らしすぎるぐらいのカップル…
「…カマ…かけてみる…?」
俺が、返事をするより早く、中条が彼らの前に立った。
次の瞬間――
中条が、真横に跳んだ……
「ビンゴ!!」
斉藤が、反対側に走る……
(…くそぅ……ヤナ感じだぜ……)
美柴は、神経がビリビリするのを感じていた。いつもは無い、感覚…
(…この人込みのせいだ……ガキどもの嬌声が……煩い……!)
「どうしたんスか?トキさん……顔、やっぱ蒼いっスよ…!」
「…あ…?…いや……大丈夫だよ……それより…左後方……来るよ…」
「…よっしゃ……」
古典的な方法だけど……他人様を巻き込む訳には、いかないのも、この新ルールだ。
おもちゃの拳銃を改造した『即席小石鉄砲』から、直径3ミリの小石が、連射される。
「やりぃ!!」
斉藤のガッツポーズ。
「…全弾命中……だな」
「当然っしょ!」
美柴は自分に向けられた笑顔が、揺らぐのを感じた…
(…あれ……?…なんだ…………吐きそう……)
揺らいだ身体を抱え込んだのは…斉藤……
「…トキさん!?………ト……」
斉藤の言葉を最後まで、聞くことが、美柴には、出来なかった…






















「………ん?……」
微妙な揺れを感じて、美柴が、瞳を開けた……
「…………れ?」
美柴は、視界の全部を蒼が占めているのに気づいて、暫く、言葉を発せられなかった。
「気がついたっスか…?」
「……斉藤…?」
「…まだ、顔、青いですね……美柴さんってなんか、持病でもあるんスか?

…こう……いきなり、倒れて…」
「…ここ…何処…?」
話の途中で、遮られ、不満げに答える…
「…観覧車の中……っス……」
(……ああ、納得…)
意識を半ば失った美柴を担いでの逃走は、不可能に近くて…

ちょうど回ってきた空の観覧車に飛び乗った…
当面の安全確保……(…なのか?)


…カタカタ震える美柴の肩…



「……トキさん…?」
「…悪りぃ……斉藤………!」
斉藤は、自分の唇が何かに塞がれたのを感じた……


(…って、トキさぁぁんっ!?)


口内に侵入してきた舌を受け入れながら、何故?という疑問より、
身体が、素直に…反応していた…


「……んっ…!……うぁ…………ぁあ……めっ……!」


理性で跳ね除けようとしても欲望が、囁く、甘い…声…
美柴に捕えられた頤が、熱く……


一周30分の大観覧車。


その中。


密室。


地面から、遠く、離れた、場所…



理由(わけ)も教えられず、斉藤は、美柴の唇に翻弄されていた。


…下半身に溜まった疼きが、解放を求めて、首を擡げる…


「…うっ!!み…美柴……さぁ…ん……」



……天国に、近い場所で























「……悪りぃ……」
まだ、上気した頬のまま……美柴が、謝罪する……
「…ん………んと…………」
(……ど、どうすりゃ、いいんだ?……俺……み、美柴さんの…

…唇……イカされちゃって……ええっと……)


戸惑いだらけの思考に、美柴が、再び唇を寄せてくる…
「……頼む……俺を……助けてくれ……ここは……キライ…だ……」
「…トキ……さん…?」


斉藤の腕が、美柴に伸ばされた、次の瞬間……


「なぁにやってんだっ!おまいらっ!!」
「ゲッ!!…中条さん……」
汗だくの中条が、観覧車の中の二人を睨みつけていた。
「…ハハハハ、ちょっち、休憩……」
「聞く耳もたんっ!!」
(…ヤベ…俺達、GAMEの途中だった……)
振り返った美柴の顔には、さっきの熱の浮かされた表情(かお)は無かった……
「行くっスか?」
「……ああ」
それは、いつもの美柴で……
(なんだか……残念だ……)


ふと、浮かんだ、考えを打ち消すように、外へ、飛び出す。










―――今日の、勝敗は…………?









END