「09.

   冷たい手」

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「…三蔵…?寝てます?」


月光の下、汗の残る肩が、規則正しく、上下している。


「……三蔵……」





――こうして…何度、あなたと肌を重ねても…拭いきれない、

この危機感は…なんなんでしょうね……
触れれば…あなたの身体は、熱を持って…

…僕の愛撫に答えてくれる…
でも…ただ、それだけ、なんですね……あなたは…
僕を……求めているのでは……無い、んじゃないのかなって……
……こんな風に、あなたに触れれば……





伸ばした手で、細い首筋をなぞる……
触れられた感覚に一瞬、眠りから引き戻される、三蔵…


「…なん………だ…?…まだ、寝てないのか…?」


半身を起こしている八戒に、向き直り、

まだ、眠そうな視線を向ける……


「……あなたと一緒じゃ…僕は、いつだって……眠れないんですよ…?」
「…………ふん…バカ言ってねぇで……寝ろ……」


言い終わる頃には、再び、眠りに引き戻されそうに……


「……三蔵………!」
「…なん……!?」


月光の下の紫暗の瞳が、大きく見開かれる…

その視界に、八戒の涙を捕らえて………


「…なんだってんだ……てめぇ……」
「…あはは……なんなんでしょうね…?」


片眼だけで、涙を流し続ける八戒を……


「…こっち向け……八戒……」


三蔵の手の平が、涙を拭っていく……





……ああ…これが、三蔵が僕を触れるときの温度だ……
……冷たい……ままだ……






だから――哀しいのか?








自問するが、答えは、無い。


求めても、得られないと、知っていたはず…

それゆえ、足掻く。

そう、知っていたはず……








「……八戒……」
「…な……なんですか……?」
「……俺を…起こした罰だ……」
「……え…?」
「……抱け……お前が、欲しい……」


正面からの視線が、八戒に絡みつく…
それは、すでに、欲望に濡れて……
ゆっくりと、回された腕が……
頬を滑る指の温度が……





……温かい…?

……三蔵………今は…これでもいい……!
……あなたが、好きです……
……あなたの……手が………






END