「…三蔵…?寝てます?」
月光の下、汗の残る肩が、規則正しく、上下している。
「……三蔵……」
――こうして…何度、あなたと肌を重ねても…拭いきれない、
この危機感は…なんなんでしょうね……
触れれば…あなたの身体は、熱を持って…
…僕の愛撫に答えてくれる…
でも…ただ、それだけ、なんですね……あなたは…
僕を……求めているのでは……無い、んじゃないのかなって……
……こんな風に、あなたに触れれば……
伸ばした手で、細い首筋をなぞる……
触れられた感覚に一瞬、眠りから引き戻される、三蔵…
「…なん………だ…?…まだ、寝てないのか…?」
半身を起こしている八戒に、向き直り、
まだ、眠そうな視線を向ける……
「……あなたと一緒じゃ…僕は、いつだって……眠れないんですよ…?」
「…………ふん…バカ言ってねぇで……寝ろ……」
言い終わる頃には、再び、眠りに引き戻されそうに……
「……三蔵………!」
「…なん……!?」
月光の下の紫暗の瞳が、大きく見開かれる…
その視界に、八戒の涙を捕らえて………
「…なんだってんだ……てめぇ……」
「…あはは……なんなんでしょうね…?」
片眼だけで、涙を流し続ける八戒を……
「…こっち向け……八戒……」
三蔵の手の平が、涙を拭っていく……
……ああ…これが、三蔵が僕を触れるときの温度だ……
……冷たい……ままだ……
だから――哀しいのか?
自問するが、答えは、無い。
求めても、得られないと、知っていたはず…
それゆえ、足掻く。
そう、知っていたはず……
「……八戒……」
「…な……なんですか……?」
「……俺を…起こした罰だ……」
「……え…?」
「……抱け……お前が、欲しい……」
正面からの視線が、八戒に絡みつく…
それは、すでに、欲望に濡れて……
ゆっくりと、回された腕が……
頬を滑る指の温度が……
……温かい…?
……三蔵………今は…これでもいい……!
……あなたが、好きです……
……あなたの……手が………
END