振り子のように、揺れる、4本の足…
右に…左に…吊るされたモノの悲鳴を撒き散らしながら…
…俺達は、その下で、肌を重ねた……
「…ねぇ…鴇……俺の事、大事…?…俺の事…好き…?」
「……当たり前だろ………鷸…」
繰り返す言葉は、底知れぬ闇の中に吸い込まれ…
五感すべてで、たった一つのぬくもりに縋りついた…
…熱い昂ぶりを……求めて……求め続けて……
充足する、その一瞬……
…そんな鷸が…素直に…綺麗だと……思った……
「…ああっ!……鴇………鴇……もっと………!」
「……わかってる………鷸…」
「……壊れるまで……抱いてくれよ………兄さん……」
「……キさん……!…トキさんっ!!」
「……………………!?」
ぼやけた視界に眼鏡の反射光…
「……って、斉藤……なんでお前が、俺のベッドで寝てるんだ…?」
「…ひ……ひどい……昨夜の事、忘れちゃってんですかぁ〜〜?」
「…うっ……まさ…か……?」
……昨夜は……確か……専学のやつらと飲んで……えっと…
「…トキさん……ホントに覚えて無いんスかぁ?」
斉藤が、しつこく、言い募る…
「……すまん…」
…この状況をどう、判断しろと…?……なんで……俺は……
……素っ裸……なんだ……?
「…ま、いいですけどね……だいぶ、顔色もいいですし…もう、大丈夫っスよね!」
……顔色……?……大丈夫………?
「…でも……あんなトキさん、初めて見たなぁ……俺、ちょっと嬉しかったっス!」
……あんな…俺…?…う、嬉しい………??…ま、まさか……
「……斉藤……」
「はい?」
「……お前と俺……昨夜は……ナニを…したんだ……?」
そう、言った途端、美柴の頬に朱が散った…
「……え?…ナニって……えっ!?……うっ……うわぁぁっ!ナニ、赤くなってんですかっ!?
トキさんっ!!」
「…ナニって……ナニか、したのは、お前だろっ!!」
初めて見る、美柴の狼狽にいつしか、斉藤の顔も赤く、染まっていた…
「ち、違うっスよ!…SEXなんてしてませんって!!」
……うっ……そんな…露骨に……
「…昨夜!トキさんが、電話くれたんじゃないですか!!
『…気持ち悪い…助けろ…』って……だから俺……」
……俺が、電話?…酔って?……斉藤に?
「扉開けたら、玄関でトキさんが、倒れてて……着替えさせたら…
…暑い、暑いって、ふ、服脱ぎだして……」
……人前で…ふ、服を……!?
「…そ、そしたら今度は、寒いって!!無理やり、俺をベッドに引っ張り込んだのは、
トキさんじゃないですかっ!!」
…一気に言い終わった斉藤は、肩で息をしていた……
「……悪い……」
素直な美柴に、斉藤も頭を掻き始めた……
「…いいっスよ……俺……嬉しかったっスから……トキさんが、俺を頼ってくれて……」
………違う……俺は、お前を頼った訳じゃない……
俺が……俺が……あの時、欲しがっていたのは……
『……ねぇ……鴇…俺が…大事…?…俺が……好き……?』
…………鷸………っ!!
…寒いよ……独りは……いや……だ………
「…ト、トキさん…?」
ゆっくりと……斉藤の胸に倒れこむ、美柴…
「…悪い……少し、このままでいてくれるか…?……寒いんだ……」
「……トキさん………」
……この時、誰かが俺に話しかけていたなら……きっと、叫びだしていただろう…
恥も外聞も無く……泣き叫んでいただろう……
だが……斉藤は……黙って……俺の肩を……抱いててくれた……
…それが………それが…俺には…………
…まだ、戦い続けられるのか…?
…俺達は……………まだ、戦えるのか……俺は……
……鷸……お前の影を……探しながら……
END