「18.

    砂糖菓子 」

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「金蝉、いますか?」


そう、ノックもせず、執務室に入ってきたのは…天蓬元帥…
最近、やたらと、俺の視界を占領しやがる……


「お仕事中、でしたか…」

「…なんだ…?」

「あれ?用が、無きゃ来ちゃいけませんか?」


…ったく……この男は、何を考えてるのか……


「……わかんねぇな……」

「え?何が、です?」


……聞いてみればいい…そうだ、簡単な事だ……


「……チッ……!」

「あ、そうそう……」


――取ってつけたような、台詞…
 

 天蓬の白衣のポケットから、何やら包みを取り出し…


「あ?」


――目の前に出されたモノに、俺は、反応を躊躇する。


「なんだ?」

「落雁です…」


――その見るからに甘そうな物体…


「…そんな、イヤそうな顔、しなくても……」


……ん?…なんだ……そのしょぼくれた顔は……??


「これを…どうしろと…?」

「…おみやげ、です」

「みやげ?」

「ええ、先日、下界に下りましてね…露天から、甘い匂いがして…

思わず買っちゃいましたv」

「…おめぇ……甘党、だったのか…?」

「いえ……?」

「…じゃあ…なんで……俺に、押し付けか?」

「…いやだなぁ……あなたに食べてもらいたかったから…じゃないですか?」


……こいつの笑顔は、苦手だ…
…胸くそ悪りぃぜ………
















強引に連れ出された、中庭…
いつの間にか、天蓬の手には、酒瓶が…あった…


「…こんな真昼間から、酒か?」

「いいじゃないですか……一杯くらい、付き合ってくださいよ…」


……ここに…と、楓の大木の根元を指差し、隣へ座れと促され…


「……………」


暫し、無言のまま、酒を酌み交わす…









緑濃い日差しが、二人の上をゆらゆら、過ぎる…
見上げては、蒼穹…








「……ふっ……ん?」


俺は、自分と同じ匂いのするモノに唇を塞がれるのを感じた……


「なん………!?」


同時に、口いっぱいに広がる……砂糖の味……


「…天蓬……きさま……」

「…つれないなぁ…金蝉……口移し、って言うんですよ?これ…」

「…チッ……酔っ払ったのか?…お前が……」

「…ええ……酔っていますよ……あなたという美酒に…」





有無を言わせぬ口付けが、いつも……俺を翻弄する……
それは何度目かの触れあいで………





「……金蝉……」

「……あっ…!……ナニを……!?」







ゆらめく陽光に天蓬の指が、金蝉の首筋を撫でる…
背筋の妙な感覚に身をよじる、金蝉……





……逃げないで、ください……


……お、おい………


…もっと、口ににしてください…この、甘さを……
僕しか、見えなくなるくらいに……


…天……蓬……?









眼鏡を外した翡翠は、本気のソレで……
そのまま…緑の褥に押し倒される……










「……ナニ、する気だ……おい……」


「黙っててください……気持ちがいいんですから……」






……勝手な言い分だ……











と、悪態をついてみるが……すでに、抗う力は残っていなかった…

押し寄せる波に身を……任せて……

溺れる……快楽に……




END