ただ、それだけの時間。
なのに、
こんなに心、ざわめくのは、なぜ?
耳に届く音楽は、あなたが吐き出す、
吐息だけだというのに。
閉ざされた空間で、ただ、共にいる時間。
それだけが、自分のすべて。
それだけが、自分。
流れる蒼い軌跡。
夕べ…
僕の肩に傷痕を残した爪が、細い軌跡を残して
目の前を過ぎる。
卓の上のカップを抱き締める、指。
僕の肌を抱いた指で、同じ、指で……
追いかけて、追いかけて、
その先を求める。
呼び起こす、記憶…
茜色に染まった部屋で、
同色に染まったあなたの肌を引き寄せた。
快楽に跳ね上がる肢体を砕けよと、抱き締めた。
…猛り狂った欲望を打ち込んだ、刹那、
描く、指の軌跡が、僕を煽る…
追いかけろと、
声にならない音が、僕の脳を犯し続ける…
狂気にも似た時間が二人の間にあった。
辿る指の軌跡が、僕を狂わせる…
欲望は果てなく、貪欲に、あなたを貪る…
抱いて、
濡れる…
息も出来ないくらいの抱擁をあなたに与えましょう。
…欲しいでしょう…?
あなたも…
…ねぇ…三蔵……
もっと、足を開いて……
…僕の指をあげるから……