戦闘中、庇った三蔵の身体から、流れ込んだ体温……
存在を確かめるような、三蔵の視線…
隣のベッドから、聞こえる、規則正しい寝息…
コーヒーカップを渡した時の触れた、指先…
すべてが……
「……息苦しい、です……」
いつから……?
「…いつ、なんでしょうね…」
…あなたを…好きになったのは……
「…すみません……」
「……八戒…」
背中に三蔵の声を聞きながら、僕は、扉を閉じる…
だって、僕には、もう、それしかないから……
もう、これ以上……
…アイツが、扉を閉じた音だけが、部屋に響く…
これで、何度目の一人の夜、だろう……
「…何が、あった……?…八戒…」
昼間の戦闘…弾の充填に為にアイツの背中に回った俺を…アイツは…
きっかり、10秒で、俺の側から……離れた……
誰もいない隣のベッドは…冷たすぎる……!
「…いつからだ…?…お前が、そんな瞳をするようになったのは…」
水の中に沈んでいく、自分が…見える……
本当のお前に出逢ったのは、いつ、だったか…
「…お前が、欲しいって、言ってんだよ…いい加減に…しろ…!」
「……さ、三蔵…」
「………………いやになったのなら……それでいい…」
「三蔵……」
「……お前にとって…俺が不要なら……それでいいと、言っている……」
「…三蔵……あなた…が……そん…な…………」
「…………………………」
「そんな風に……言ったら………」
「…………………………」
「……僕は………!……もう……自分を抑えられなくなる……!
あなたの姿を見ただけで、声を聞くだけで…あなたの体温を感じるだけで…
僕は……あなたを…めちゃくちゃに……したくなる……!…壊して……しまう…
…自分のしなくてはならないこと…すべて……何もか…忘れて……あなただけで…
…いっぱいになる…そんな風に言ったら……壊してしまう…
…あなた…を…『欲望』という、身勝手な刃で……」
「…………………」
「だから………」
「…八戒………てめぇだけだと、勝手に思ってんなっ……!
…そんな事だけで……そんな事だけで……あんな瞳をし続けていた…
…そう、言うのか?……お前……とことん、バカ、だな……
…お前が…俺を呼ぶ時…俺を見つめる時……俺は……俺は……自分を失くす…
……頭ん中に響く声に……反抗しやがる……んだよ……この身体…が……」
「…三蔵…………」
「…だから、今すぐ、お前が欲しいと、言っている…」
「…なんだか、滑稽、ですね?」
「…そう、だな………」
「簡単な事、だったのに……しごく、簡単な……」
「……八……戒………」
ただ、触れれば、よかった……愛しい人の温もりに…
…三蔵の熱さに自分を埋めてしまえばよかったのに……僕は、どうして…?
確かめれば、よかったんだ……ただ、己の心を…
たった、それだけが、出来ずに…確かめる事の怖さに…負けていたのは、俺だ……
…離したくない…!
離れたくなど…ない…
「…飛行機雲………」
「…あ?」
「…蒼い空に白い線。あんまり、綺麗すぎて……見惚れてしまいますね」
「…………フン……お前の…横顔のほうが……俺は、好きだがな……」
「……あれ?…もしかして、今、何気に『告白』されちゃいましたかねぇ……」
「……勝手に……そう、思ってろ……」
「……はい、そうします……」