「偽りの夢」
情を交わし、 愛を紡ぐ…
それが、六聖獣に許されるのか…
止められない想いだとしても、天使として、許される行為なのか…
…触れてしまえば終わりだとも感じていたはず…
しかし、シンの心は、すでに決心していた。
たとえ、何があっても…
神に逆らう事になってもこの温もりを失いたくは無い、と…
たとえ、天と地に引き裂かれ、永い時を離れて過ごすことになろうと……
蜜の刻が、偽りの夢だったのかと、疑うほど、
永い時を違う時間で過ごす事になろうとも…
「お前は…何をいつも思っている…?」
「…わたしの、思い…?」
「ああ、時々、隣にいないのではないかと思う時がある…」
「…今が…この時間わたしにとって夢のような時間だからです…
こうしてあなたに触れている…その実感が、まだ、わたしには…」
「…フッ…こんなに近くに居るのにか…?」
いたずらな唇がまだ、熱の冷めない肌に濡れた刻印を付けていく…
「…あっ……ユダ……」
「イヤでは…ないだろう…?」
「そん……な……!!」
「……シン……もう一度……お前を…」
天地を創造し、神よ。
己が、子の天使達に与えたのは、愛だけではなかったのか。
地を這う人間と同じ試練をかの二人に与えたというのか。
すべてを統べる、神よ。
お前が望む世界とは……?
…混沌を再び、この世界に招きいれようと、その腕を振るうのか…
すべては、神の意思、お前の意思、なのだな?
ならば、その試練、この身すべてに受けよう。
千と万の試練を……
「…ユダ…再び、逢える日だけを…私は待ちます…あの時が、偽りにならぬように…」
END