「恋文」



「今度は、何を読んでいるのだ?」



気がつくと傍らにはあなたが居て、



あなたの隣がわたしの居場所だと、思っていた。



「どうという本では…少し、考え事をしたかったので…」



どんな本でも良かったのです…



言葉を続けようとしたわたしの耳にあなたの朗とした笑い声が届く…



「お前は考え事をするのに本を読むのか?」



…面白いを言う…



と、ついと伸ばした指先でわたしの首筋に触れる、



そんないつもの仕草に鼓動は不器用に速度を上げる…



天界に流れる悠久の刻の中で、



二人、並んで歩けると、そう、信じていた。



伸ばした腕をあなたと繋ぎ、指を…絡めて……



体温を感じるほどの距離。



言葉のいらない時間…



…耳に届く、呼気…



それだけで、わたしは……



どんな本にも書いていない、



わたしの心を書き表わす言葉は…





「…お慕いしています…ユダ………」

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