「撫子」
「どうした…?」
「…ユダ……!?」
「何をそんなに驚く?」
「いえ…」
「皆が心配していたぞ。さきほどの会議、上の空だったではないか」
「…す、すみません…」
「何か、心配事でもあるのか?俺でよかったら、聞くぞ…?」
「……あっ…」
「………………」
「いえ…大丈夫です…ユダに心配していただくことなど、何も……」
「…そう、か…?」
「心配してくださって、ありがとうございます」
「…俺は、いつでもお前の側に居る…いつでも…俺の所に、来い…」
「……ユダ……」
「ああ、この華は、まるでお前のようだな…」
ユダが、薄桃色の花弁に唇を寄せる…
まるで、接吻を交わすように…
(…ユダ…
わたしは……あなたに……)
風が、撫子を撫でてゆく…
様々な想いを運んで、 風が、流れる…
人を想う心、
人を慕う、心、
他人を愛する、心…
それはたとえ、天使であっても正当な理由にはならないのだろうか。
人間は独りでは生きて行けない。
愛する人と巡り会い、共に生きる。
永遠の命を持つ、天使でも…
独りの夜は、寂しいのではないのか?
共に語らう『友』と呼べる相手を欲しても、
何も、異質な想いではないと…
そう、言い聞かせているのか…
己の想いが、確かな想いであることに、誇りを持つために…
緩やかに揺れる撫子の薄桃色が、視界を占領して…
想う、
「共に、生きたい…」と……