色彩




「三蔵…?」
主のいない部屋。
ゆらゆら、陽炎が、見える、小さな窓。
「…もしかして、僕…避けられてちゃってるんでしょうかね…」
溜息が、零れる、真昼時……


『色彩』


…力を…抜いて…三蔵……そんなに僕を…締め付けないで…!
……なっ…!?…んな…つもり……あっ!?
…… 三……蔵…三蔵……三……!!

視界を極彩色に染めた、真夜中…
確かめ合った熱さ…
そう、もう、変わる事など無い、と、信じた、心の色……




「買い物ですか?だったら僕も……」
「…いい……」
変わる事など無い…?
そんなモノなんて、無い、って、そう、思っていたのは、 僕自身、なのに…
…あなたが欲しい、それは、変わらないと…思ってる…
だけど……あなたは……?

「夕べ、しつこかったんでしょうか…それとも…アレ、がイヤだった…?」
…何を…冗談めいた事ばかり、理由にしようとしているんでしょう…
答えは、明白…変わったんですよ……
変わって、しまったんです……

「…バカ面は、猿一人で十分だ…」
「…三蔵!?」
変わってしまったなら、自分の心が、悲しいのなら、 泣いてしまえと、
張り詰めた糸を切ろうとした、
刹那…
「…いつまで、そうしてるつもりだ…?」
頭上から降り注ぐ声は、麻薬で… 急速に酔っていく、心の色を見つめる、八戒…
「……すまない…」
「……え……?」
……何を……?
…あなたの口から、謝罪……?
「…お前にそんな顔をさせたのは、俺……だな……」
立ち昇る紫煙が、三蔵の表情を隠す…
「…お前は……本当に…俺の事を……」
夜目にもわかる、三蔵の動揺……
「好きです、あなたが」
「…………!?…だ、だから…お前は……!!」
「いったいどうしたっていうんです?!三蔵…言いたい事が、あるなら、はっきり……」
苛立ち、諦め、覚悟、真実を…
そんな受け入れたくない事実だけを予感した、宵の口…
「…お前が、そんなだから…俺は…俺は、自分が、イヤになる…」
三蔵の心の中…見えない、色 「わかりました……」
終焉 そんな言葉が、鳴り響く、黒の中……
「何が、わかったって言うんだ!?…俺は、まだ、お前に……言っていない……!!」
「だから、わかったと……」
振り向いた身体に感じた、重さ…愛しい重さ……
「…勝手に決めるな…!…八戒…」
「……三蔵……」
この時が最後なのかと、三蔵の背に両腕を回す……
少しだけ、強張る法衣に守られた、肢体……
「…俺の……気持ちを……お前に……言って無い…」
「………えっ……!?」
「……側にいろ……命令だ……」
「…え?」
「……煩ぇ…聞き返すな……!!」
「あれ……これってもしかして……」
「…な、なんだって…言うんだ…!」
「もしかして、『告白』ってヤツですかね?」
「もしかしなくても……だっ!!」
直接触れた肌から流れ込む体温は、上昇を続けるばかり…
それでも、詰め寄る、八戒の心…
「…てっきり、お別れの『告白』かと思ってました。でも、違ったんですねぇ!
…ああ、やっぱり、もう一回、聴きたいです♪」
「……ぜってー……言わねぇ……」
「…言わせます」
……あなたが、そんな事で、悩んでるなんて知りませんでした…
そんな事…だと…?
…ええ…… そんな事、です……
………………
…言わなくたって……あなたの気持ちは、わかってました…
たぶん……
………たぶん…かぁ……?
ええ、少しばかり、私の心に迷いも、ありましたし…
だから『たぶん』です……
……はぁぁ……
そんなに気落ちしないでください……
わかっていたんですよ… 少なくとも、あなたを抱いている時間は……
…なっ………!?
……身体は……正直、ですから………


回り始める、極彩色の時間……


ゆらゆら…揺れる、心の模様色………


END

シロ様へ
キリを踏んでいただき、ありがとうございます。 リクにお答えできているでしょうか? どうぞ、お受け取りくださいませ..
管理人 
MITSUKO