その夜、ゼフェルは、いつものようにエアバイクを飛ばしていた。
(珍しく、静かな夜だな…)
いつもなら、そこここに虫の声や川のせせらぎの音など、平和な時間を感じさせてくれるのだが…
(あの星達は、いつもと変わんねぇのにな)
気配に邪悪なものは感じられない。だが、いつもとは違う空気にゼフェルの足は、止まったまま。
何気に宮殿へ視線を向ける。
アンジェリークが、女王となったのは、1か月前。
『一緒に逃げてくれ』
すべてを捨てるつもりで伸ばした手は、あの白い翼に抱き留められてしまった。
『女王としての私の傍にずっといてください』
両の瞳に涙を溜めて、そう答えるアンジェリークにゼフェルは何も言えなかった…
(…確かに…おめぇの気持は感じていた…俺と同じ気持ちだって…だけど…)
約束の場所に現れたアンジェリークは、もう女王の翼を持っていた。
わかっていて、それでも想いを告げた。もう、後悔はしたくなかったから。
「アンジェリーク…」
刹那、あれほどに輝きを放っていた星々が、消えた。
「………っ」
同時に数え切れない流れ星が、天空を流れ始めた。
「あいつ…」
『…あ、流れ星…』
『ん?』
『願い事…間にあったかな…』
『なんだよ、おめぇにも願い事なんかあんのかよ』
『ありますよ…大事なお願い…また、こうやって二人で流れ星を見れますようにって…』
『おめぇ…』
『その時は、ゼフェル様も一緒にお願い、してくださいね?』
「確信犯かよ…今日が、俺の…」
ゼフェルの呟きに答えるように星に輝きが増していく。
「わかったよ…一緒に願ってやるよ…」
おめぇの為なら、いくらだって願ってやるよ。
この宇宙の平和だろうが、なんだって…
たった一人の女王様の為に、いくらだって…
だからさ…待ってて、いいか?おめぇの隣で…
―ゼフェル様、お誕生日、おめでとう。 来年も私にお祝い、させてくださいね?
天空を仰いだゼフェルには、確かにそう囁く、アンジェリークの声がした…
Let me do celebration of your birthday all the time; in eternity…